支援事例

三菱電機株式会社 開発本部

組織風土改革のための“表彰制度”再構築プロジェクト

100年企業が抱える“組織風土”の課題解決に向けて
“日々の行動を変える”トリガーとなる、新しい表彰への挑戦

三菱電機株式会社 開発本部

現在、三菱電機株式会社は全社的な『組織風土改革』に取り組んでいます。これは品質不適切行為問題を受けて、閉鎖的な組織風土の存在が一因にあったことから、新しい三菱電機の創生に向けた“変わる”覚悟となる 3 大改革のうちの1つです。
『組織風土改革』は全社に加え各事業本部等の組織単位で推進されており、三菱電機の研究開発を担う開発本部では、その実行を推進する『開発本部変革プロジェクトグループ』が設置されました。そこで新しい風土を築く施策の1つとなったのが、毎年行われている開発本部長表彰でした。事業本部に適した評価基準に関する疑問や、マインドチェンジに向けた施策として、表彰制度は評価基準を明示できるので効果的ではないかと、抜本的な見直しを敢行しました。成熟した組織の変革に対し、表彰が及ぼす作用とは何か。開発本部変革プロジェクトの担当者3名にお話を伺いました。

支援内容:表彰制度の構築
支援方法:コンサルティング、プロジェクトミーティング実施
開催日:2022年7〜11月
組織数:約2,200名

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 電機システム技術部 次長

山本 和男 様

電力システムとモーターを中心とする電気機器のH/W技術と予知保全技術、それらを支える基盤技術を部員と共に開発し、三菱電機の未来事業を拓く新技術の創出にも挑戦している。

三菱電機株式会社 開発業務部

木谷 怜二 様

開発本部の人事総務を担当するとともに、開発本部変革プロジェクトグループの「風土変革」を切り口に変革・改善に寄与する施策の企画立案に携わる。 今回の「表彰制度再構築プロジェクト」でも主担当を担っている。

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 情報ネットワークシステム技術部

跡部 悠太 様

社会全体を支える様々な IoT ソリューションにおける安全性向上のためのセキュリティ技術が専門分野。 現在は、セキュリティ領域のサービス開発や開発プロセスの効率化に向けた研究を行っている。

本事例のサマリ

本施策の目的
組織課題を踏まえ、表彰制度を本来の目的に軌道修正する
成功のポイント
①評価基準(開発本部長表彰)の見直し
②エントリーするためのプロセスの簡略化
③エントリーマニュアルの作成

人材・技術・想いを繋ぐ“仕組み”に対するジレンマ

Q.開発本部の『組織風土』に対して、これまでどんな課題をお持ちでしたか?

山本:三菱電機は、“人材”と“技術”で成り立っている会社。しかし、100年も経つと、この二つを繋ぐ“仕組み”のあちこちにほころびが出ていると感じます。具体的には、目的と手段。たとえば、安全やセキュリティなど、やらないといけない目的に対し、どうやるかという手段は現場に任されていました。それも長年続けていると、昔からのやり方や仕組みに縛られ、その結果、受け身、内向きという状態が起きていました。要は、「目的に対してその手段が最適なのか?」という見直しがかけられなくなっているのが課題だと思います。私は管理職として、自分の部でやれることはやってきましたが、それだけでは不十分な面もあって、開発本部や全社の視点で変えなければならないところもある。それで今回『変革プロジェクト(以下、変革プロ)』に手を挙げたのです。

変革プロへ立候補した背景を語る山本様

 

木谷:研究所の一人一人から話を聞くと、“開発本部らしさ”である熱い想いを持って研究開発を行っています。しかし、その想いや取り組み内容を共有する“仕組み”がうまく機能していなかったり、見直されていないことが多いと感じていました。そのせいか、全体が集まると急にフタをされた感じで、想いや取り組み内容が他の組織に共有されてないな、と感じることがよくありました。私はHR部門として、この組織のパフォーマンス向上が至上命題であり、そこにダイレクトに効いてくる施策がしたいという想いがありました。

跡部:私は、みんな三菱電機グループの仲間なのに、どこか他人事のような、遠くから見ている人のように感じる部分があって、チームへの所属意識や仲間意識が薄れているところに課題を感じていました。大人になるにつれて、言語化したり行動で表すのは恥ずかしさもありますし、100年企業だからそんな風土になっているのかなと。私は「みんなでやっていこうよ」とクサイかもしれませんが、改めてそういう意識を繋げていきたい。そうすればもっともっとパフォーマンスを発揮する良い組織になるはず。そういった思いで『変革プロ』に手を挙げ、参加させてもらっています。

開発本部らしさ”を共有するため、社内表彰を抜本的に変える

Q.組織風土の課題に対して、『変革プロジェクト』が取り組んでいることとは?

木谷:2022年に策定された、全社的な『組織風土変革』の指針となる『骨太の方針』を開発本部で確実に実行するため、以下の3つのテーマと細かなアクションアイテムを設定しました。基本的には、健全な組織風土を自分たちの手で創り上げていくためにも、全従業員がそれぞれアクションを起こしていくという方針です。なので『変革プロ』は、テーマ設定などのインフラ整備し、その実行のための部署間の横断的なサポートなどを担っています。

『変革プロジェクト』の3つのテーマとアクションアイテム

1.コミュニケーション活性化
上層部と社員層の双方向コミュニケーション、表彰制度の見直し、会議体の変更など

2.本質業務への注力
業務フローの見直し、業務効率化の仕組みの検討

自発的成長または行動の促進
・各種施策(全社・開発本部内)に関して、研究所・センターへの理解浸透ならびに現場意見のフィードバックを自発的成長(行動)の観点から行い、各施策をブラッシュアップ。
・開発本部長表彰の評価項目見直し

 

Q.『変革プロ』の取り組みとして、なぜ表彰制度に注目されたのですか?

木谷:そもそも組織風土は目に見えないもので、思い浮かぶものもみんなバラバラ。エンゲージメントが高まる仕組みや制度も、唯一無二の正解はありません。その中で改革といってもなかなか難しい。そこで、コミュニケーション、表彰など、目に見えて“変化”を感じ取りやすいものに着手したいと思いました。その中でも、これまで十数年大きく変えてこなかったのが社内表彰制度でした。

山本:今までは、現状維持のバイアスがあって、時間やコストをかけてまで変えたがらない空気がありました。しかし、『組織風土変革』を真っ向から考えないといけないタイミングも相まって、変えるなら今だと。さらに、表彰の目的の1つは、“開発本部らしさ”を共有することだと思っていて、表彰はその絶好の機会になると感じました。

木谷:受賞案件を通じて“開発本部らしい”行動、マインド、挑戦などをみんなで共有し、みんなで称賛し合えるような表彰へ、非受賞者にも「来年は受賞できるように頑張ろう」と目指していく表彰になることが、組織のパフォーマンスを上げる一つのきっかけ作りになると思ったのです。一方で、私たちには組織変革に繋がる表彰制度の作り方や活用のノウハウもなく、スピード感も重要でしたから、その領域での実績のあるリンクイベントプロデュースさんに依頼をしました。

 

 

Q.これまでの社内表彰には、どんなイメージや課題があったのですか?

跡部:ずばり卒業式。表彰状をもらう形式も格式も卒業式そのもの。表彰へのエントリーも大変で、管理職の方は長い推薦文を書かなくてはいけない。そこまで頑張って受賞しても、セレモニーの場が儀式的で楽しくない。理由も示されないから、伝わらないし、次に繋がらない。この時間を生み出すために、毎年こんなに苦労しているのかというのが正直な印象でした。

社内表彰への想いを語る跡部様

 

山本:やはり、長年の制度運営の中で、形骸化している部分があると感じていました。本来、“開発本部らしさ”となる、クリエイティビティ、デザイン、新技術など、その挑戦の多さが将来のチカラに変わっていくはず。一方で、評価制度は網羅的で、業績、事業、技術の全項目に貢献したら受賞できるという基準。そうではなく、失敗や成果に関わらず、開発本部の風土である“挑戦”を評価したい、挑戦していることに対する感謝も表彰で伝えたいのです。

跡部:表彰式ってやっぱり、受賞者が笑顔になるべきですよね?受賞者、渡す側、それを聞いた周りの人も笑顔が絶えない表彰式が良いなって思います。それが本来の表彰式の場であると思うのです。頑張ったプロセスや成果をみんなで共有できる場。その本来の目的、形に戻したいと思っています。

 

Q.今回の表彰制度は、どういったところを改革したのですか?

木谷:まず、大きく以下の3つを変えました。

1.評価基準(開発本部長表彰)の見直し
2.エントリーするためのプロセスの簡略化
3.エントリーマニュアルの作成

 
1つめは、従来重きが置かれていた「利益、事業、技術への貢献」に対する満点評価から、開発本部に即した「技術や挑戦意欲・プロセスへの貢献」の重視、さらに「社会課題解決力」といった評価項目も追加しました。また、研究開発を支えるスタッフ部門へもフォーカスを当てるため、経営システムに関する項目も明確化しました。これによって、技術的、社会的にどう優れているのかを評価ポイントとすることで、より多くの、よりタイムリーな挑戦を評価していきたいという想いがあります。

山本:2つめの、エントリープロセスの簡略化は、評価基準の見直しによって、申請書の作文量が半分以下になりました。これは自分も身を持って経験していたこともあり、この作文作業を減らすのはマストでした。

木谷:3つめの、新たなマニュアルの作成に関しては、評価基準が変わり、エントリープロセスも大きく見直したことで、「何を書けばいいのか?」「評価ポイントは何だったか?」など、改めて該当案件の参考例やエントリーの書き方などを見せることで、職場での捉え方のズレを軽減できるよう志向を凝らしました。エントリーしようかなと思った時に、すぐにアクセスして見られるようにしているのも、ポイントです。

成熟した組織の殻を破り、より繋がり、より強い組織をめざして

Q.表彰制度の再構築が終わり、次のステップを教えてください。

木谷:新評価制度のもと、社内表彰の募集が2023年1月スタートし、6月には表彰式を実施することが決定しています。とはいえ、従業員への理解共感はまだまだこれからです。表彰式の施策には、表彰案件のプロセスやストーリーもしっかり発信していきたい。
そうした表彰式を実施してはじめて反響、効果、変化が感じられると思っています。受賞できなかった人が、受賞案件の具体的プロセスを知ることにより、「自分も来年は…」と感じてもらえれば、日々の行動の変化のきっかけにもなり、風土変革につながると思います。心理学者の有名な言葉である「感情が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」という一文を自分なりに解釈して「社員の感情が変われば行動が変わり、行動が変われば成果が変わり、成果が変われば会社の業績が変わる」、そんな端緒となる制度になればと考えています。

 

Q.表彰制度の再構築において、印象に残っていることがあったら教えてください。

木谷:表彰は、振り切って考えると何を表彰しても良くて、どんな表彰制度であっても良いと思います。ゆえに、社内の人のみでは議論は発散しがちです。そうした時も、リンクイベントプロデュースさんがいたことで、ありたい姿、変えたいこと、残したいことを整理できました。また、これまでの実績や他社事例を踏まえて第三者の視点でスパっと言ってもらえたので、決まるスピードも早かった。やはりそこが良かったなと思っています。本来こういう施策をやる時は、一方的な導入になることも多いですが、今回は変革という文脈においても、上層部、変革プロ、他社の方の意見をもらいながら、抜本的な再構築ができたと思っています。

表彰制度の再構築について語る木谷様

 

Q.最後に、意気込みを教えてください。

跡部:私はどうせ働くなら、仕事を存分に楽しみたい。“楽しい!”を広げていきたいのです。三菱電機には魅力的な人が本当にいっぱいいて、そうした人たちと繋がるのが好き。人と繋がって、先端技術に取り組んだり、一緒に研究したり、仕事が楽しくなることをつくっていくのは本当に面白い。正直、仕組みとか目的とか固いこと言わず、年齢、役職にもとらわれず、みんなで繋がって、楽しもうよ!という想いで、表彰制度の見直しにも取り組んでいます。今後も、人と人とを繋いでいくきっかけ作りを私自身や仕組みとして取り組んでいきたいと思います。

木谷:当社のような歴史ある企業では、当たり前のように継続してきた仕事の中で、目的を見失っていたり、時代にそぐわなくなった施策や業務アイテムはまだまだ多いと思います。その1つが表彰制度であり、本来の目的どおりに見直しをかければ、社員の心を動かす1つのアイテムになる可能性を秘めていますし、組織内にグッドサイクルを回すきっかけになると思っています。とはいえ、組織にフィットさせていくためには、研究と同様に実証実験を繰り返し、トライ&エラーを続けることも大事。そうして、従業員のみんながより働きやすく、働きがいを持ってもらえるような環境が実現できればと思います。

山本:すごい人、すごい技術はある。ただ、全体を俯瞰したシステムがうまくまわっていない。これはもしかしたら三菱電機に限ったことではないのかもしれません。今まさに日本の技術力の復活が試されている中、ここで三菱電機が復活し、そのプロセスを見てもらい、日本に良い影響を与えていきたいと、そのような気概を持って、今後も組織風土改革に向けて、全力で取り組んでいきたいと思います。

三菱電機の実証施設SUSTIE(サスティエ)にて

※「SUSTIE」は、SustainabilityとEnergyを組み合わせた造語。
省エネと健康性・快適性を研究・実証していくオフィスを柔らかい語感で表現している

本事例のサマリ

本施策の目的
組織課題を踏まえ、表彰制度を本来の目的に軌道修正する
成功のポイント
①評価基準(開発本部長表彰)の見直し
②エントリーするためのプロセスの簡略化
③エントリーマニュアルの作成
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