“未来に残る” “従業員の当事者意識を高める”
コロナ禍で創り上げた「新たな周年事業」のカタチとは?
“未来に残る”“従業員の当事者意識を高める”そうした150周年事業の新たな形を考え抜き、コロナ禍でWEBを活用した新しい周年事業を成功させました。その成功のポイントやその後の変化について、お話をうかがいました。
株式会社鴻池組 経営管理総轄本部 経営戦略本部 経営企画部 部長
百田 慎治様
経営企画部として、会社の経営方針策定から具体的な戦略実行までを担い、今回の150周年ではコアメンバーとしてプロジェクトを牽引した。
インタビュアー 株式会社リンクイベントプロデュース 技術統括ユニット マネージャー
林 知宏
今回の鴻池組150周年プロジェクトの制作パートナーのリーダーとして伴走。
本事例のサマリ
百田様:鴻池組は1871(明治4)年に大阪で創業し、土木・建築事業を中心として様々な挑戦と実績を積み重ね、2021年に150周年を迎えました。これまでも数々の荒波を乗り越えてきましたが、今後はより一層未来予測が難しい時代となります。そうした時代を生き抜くためにも、従業員には未来の会社創りの当事者になってもらいたいと考えています。一方、以前の従業員満足度調査では『会社の将来に対する希望が持ちにくい』という結果が出たことで、従業員だけでなく会社も変わらないといけないという思いを強く持ちました。今一度、会社は目指す方向を明確に指し示し、従業員も当事者意識を持って会社の未来を考えるきっかけを生み出したい。しかし、日常業務の中で、そうした機会を生み出すのは大変難しく、創業150周年事業をその好機にしたいと考えました。
百田様:30年前の120周年では、お客様や幹部社員を対象とした“お祝い”がメインの祝賀会が行われました。それもあってか、当初周囲の周年事業に対するイメージは「記念式典に有名タレントを呼んで皆が楽しめればいい」といった感じでいわゆる打ち上げ花火的なものでした。
百田様:本格始動に向けてプロジェクトチームに多くの若手メンバーが入ったものの「なぜそんなに負荷のかかることをするのか」という声も上がったほどでした。彼らは会社事を考えるなんて、普段やってもみないことでしたし、どう考えていけばいいのかもわからない状態でした。そこで周年事業のプロフェッショナルであるリンクイベントプロデュース(以下、LEI)さんに入っていただき、周年事業の体制や考えるステップを相談させてもらいました。
百田様:そうしてLEIさんと「周年事業を何のためにするのか」「周年事業のゴールは何か」を考えていく中で、徐々に皆の会社に対する想いがあふれ出し、それを共有できたことで、会社づくりへの意識が高まっていったのだと思います。その後は、「こうしたら従業員の会社について考える意識が高まっていくのではないか」「こうしたらもっと会社の未来を考えることができるのではないか」という意見が積極的に出るようになり、まさに最初に「当事者意識」を強く持ってくれたのがプロジェクトメンバーでした。この最初のチームづくりが成功に向けた大切なプロセスだったと思います。
百田様:周年事業全体の設計にあったと思います。LEIさんには、周年イヤーとなる1年間をかけて様々な施策を繋ぎ、徐々に全社の温度感を上げていくという視点がありました。周年といえば、メインの式典イベントに力点を置きますが、2000名を超える従業員に対し、「会社づくりの当事者化」と言って式典単発ですぐに変化が起こるほど簡単ではないからこそ、周年事業の施策には、考える機会、参加のしやすさにもバリエーションを持たせる必要があると感じました。
百田様:それが私も嬉しかったです。そうすることで「未来志向」「一過性のものではない」「未来に残る」「全員参加」といったキーワードで、全従業員がワクワクできる150周年にしたいというチームの思いが1つになり、周年イヤー1年間の施策をつくり上げていきました。
【長期ビジョン】
150周年を機に2050年に向けた長期ビジョンを策定。「ジュニアボード」の提言が長期ビジョンに織り込まれた。
【記念品】
永く使い続けられるものとして、環境対応を意識して選定。
【フォトコンテスト】
「後世に残したい鴻池組の今」をテーマに、工事や執務の様子など幅広く募集。
【会社を良くする未来選手権】
会社を良くするための提案制度。全従業員にワークショップを実施し、部署ごとに制度案を提案。各支店で選抜を行い、代表案を従業員にWEBプレゼンし、全従業員投票を実施。選ばれた制度については有志によるプロジェクトを組成し、制度化に向けた取り組みを行っている。
【夢グランプリ】
鴻池組で実現したい社員個々人の夢を募集。
【ジュニアボード×起業家セッション】
若手社員から選抜された「ジュニアボード」が、まさに世の中を変えている起業家と会社の未来を語り、長期ビジョンに対する提言を行う。
【150周年特設サイト】
150周年事業を全従業員に向けた取り組みとして身近に共有していただくためのプラットフォームとして制作。全社員の写真をカウントダウン式に掲載するなど社員の参画感を高める工夫を取り入れる。
【WEB式典】
150周年特設サイト内に特設ページを開設。社長メッセージや祝辞をはじめ、長期ビジョンの発表をムービー配信で実施した。
百田様:周年イヤーのメインイベントだった式典のリアル開催は中止せざるをえませんでしたが、150周年プロジェクトとして従業員参加型となる様々な施策を線で設計していたことで、大きな不安はなかったです。150周年社内特設サイトを作ったり、リアル式典をWEB式典に切り替えたりという作業は大変でしたが、WEBに移行するだけで目的がブレることはないと思っていました。
百田様:それは周年事業の施策を4つの観点で繋いだことです。まず、周年を一過性のものではなく、未来に残るものにするために、“物理的に残る” “制度に残る”という観点。そして、全従業員や組織を動かすために、“インパクトとして残る” “全員参加”という観点です。
百田様:150周年ということで、WEBの特設サイトへの注目度は非常に高く、社員の写真による日替わりカウントダウンがサイトを盛り立て、社員参加型にこだわったコンテンツがアップされたり、進捗が更新されることで、高いPV数で繰り返し見ていただけるものになりました。「誰も参加してくれなかったら…」という不安をよそに、施策への応募件数も想像以上で、プロジェクトチームでは連日嬉しい悲鳴が上がっていましたね。WEB中心という形式で盛り上がるか心配していた経営層にも、「非常に楽しめる企画ばかりで良かった」と言っていただき、全社員参加型は新しい形での好事例ができ、本当にやって良かったと思っています。
百田様:『未来選手権』で提案された制度化づくりを公募でメンバーを集めたのですが、10名以上の従業員が手を上げてくれました。彼らは自分たちの提案が選ばれた訳ではないのに、「会社の未来を考える機会そのものが非常に貴重だったので挑戦してみたい」と応募してくれました。こうしたプロジェクトの全貌をWEBで見える化したことで、未来志向で考える従業員が確実に増えていることを実感できましたし、それに刺激を受けてくれた従業員も多く、それは「『ジュニアボード』や『未来選手権』を毎年開催してほしい」という多数の声にも現れています。さらに、「従業員発信ができる組織になった」という声もいただき、変化を生み出すことができたのだなと私自身も実感できました。
百田様:はい。ただそれは、当然100%ではなく、まだまだこれからだと感じています。150周年を経て感じたのは、これまで従業員が積極的に発信できる機会が少なかったということ。私はそうした機会を増やし、この比率をどんどん上げていきたい。そうすれば、必ずや強い組織になると信じています。さらに若い力がプロジェクトを受け継ぎ、新しい鴻池組への変化を促進してくれたらと願っています。
百田様:実は、既にLEIさんには151年目に向けて一緒に動いてもらっています。これまでもプロジェクトチームづくりからプロジェクトの推進、企画の実行・実現までを力強く支援していただき、これからの鴻池組の進化をともに考え、一緒に伴走いただけるパートナーが存在することは心強いですね。150年続いた鴻池組をさらに発展・充実させて未来へ継続させるためにも、未来志向で、従業員やお客様、そして社会に向き合い続けていきたいと思います。
本事例のサマリ