企業理念への〈理解〉を深め、〈行動〉を後押しする
ライブ中継×ムービーによる初のオンライン社員総会
1947年に京都で創業し、エンターテイメント事業や飲食事業、温浴/レジャー事業を展開する株式会社晃商。その社員総会「第2回ココロオドル総会 ~理念体現って何ですか?~」が、2021年2月4日にオンラインで開催されました。企業理念「ココロをみがき、明日をつくる。」のさらなる浸透をめざした本イベントは、従業員に感動と刺激を与え、理念体現への行動変容を後押しすることに成功。イベントの企画運営を牽引した、専務取締役の新井丈博様にお話を伺いました。
専務取締役
新井 丈博 様
理念浸透プロジェクトを全社で推進する旗振り役であり、その一環となる社員総会のプロジェクトマネージャーを担当。理念浸透、従業員のエンゲージメント向上のために様々な施策に取り組んでいる。
本事例のサマリ
「ココロをみがき、明日をつくる。」という当社の企業理念は、創業から従業員みんなで意識してきたことを2017年に改めて言語化したものです。その年に初めて全社員を対象とした社員総会(「第1回ココロオドル総会 ~理念って何ですか?~」)を開催し、新しい理念と行動指針を発表しました。
そして2020年がちょうど設立50周年。それを記念してお店も思い切って休んで、社員を一堂に会しての社員総会 兼 社員旅行を企画していました。その総会の題材を考えていた時、1回目の社員総会から3年が経ち、果たしてどれくらい理念が浸透しているのかということで、「理念を実践したエピソード」を従業員から集めてみたのです。実に200件以上ものエピソードが集まり、嬉しかったのも束の間で、その多くが理念の「体現」にはかなり程遠いレベルで、正直、愕然としました。日頃、理念は会話の中にも飛び交っていて、共感はしてくれていたからこそ、皆が解釈を誤っているとしたら…と恐怖すら抱きました。
そこでこれを機に、集めたエピソードの中から「これは理念を体現している」というものを共有することで、晃商の理念とはこういうことだよね、決して難しいものではないよね、と語り掛ける必要があると思い、こうした理念の再浸透を軸とした、総会のプログラムを構築していきました。
そんな中、新型コロナウイルスの影響で社員旅行の開催は断念しました。じゃあ、理念の再浸透を先送りにするかと考えた時、私の中で「いや、あかんやろ」と。そんな時にリンクイベントプロデュースさんからご提案いただいたのが、オンライン総会という形でした。
実は、第1回の社員総会もLEIさんにお願いして、この総会が「晃商にとっての紀元前・紀元後」の境目のように語られることになる、印象的な「場」を生み出してくれました。私も従業員も初めての総会で不安が大きかった中、LEIさんは豊富なノウハウに基づいた提案やサポートで非常にスムーズに導いていただき、大船に乗った気持ちで当日を迎えることができました。当社はリンクアンドモチベーションさんのエンゲージメントサーベイを軸に組織づくりをしていることもあって、組織の状態や組織をよくするためには…という理論も理解してくれているので、非常に話が早い。ですので、今回も依頼にあたり迷いはなかったです。
また、総会の肝と考えていたのが50周年を振り返るヒストリームービーと理念を体現したエピソードムービーでした。やはり、理念浸透という目的を果たすには総会全体を同じトーンとカラーで統一する必要があると思ったため、映像制作まで一貫してLEIさんにお願いすることにしました。
ヒストリームービーでは、50年の歴史と理念の成り立ちが語られた
まず、私が重視していたのは「ライブ感」。スポーツの試合を生中継で見るのと録画で見るのとでは興奮度が全然違うように、「今まさにやっている」という緊張感を視聴者側にも伝えることで、みんなに“シビれて”ほしいと思ったんです。
一方で、オンラインの集中力は2時間が限界だろうと思ったので、2時間の中でとにかく飽きさせないように緩急をつけることを最も意識しました。経営陣の話やディスカッションを画面越しにずっと聴き続けるのは相当しんどいですから、ムービーを入れることで視聴者側の緊張感が自然に切り替わるようにしました。
まず、会社の歩みを描いたヒストリームービーを流し、リラックスしながら会社への理解を深めてもらう。次に社長がライブ出演し、一気に集中モードへ。そして目玉のエピソードムービーでは、理念を体現した従業員3人のドラマティックなムービーで理解を深め、各ムービー後は店舗からのライブ中継で本人を登場させて、くだけた雰囲気のインタビューで楽しみながら肩の力を抜いてもらう、という流れです。
理念というものはいわば「理想の話」ですので、実現不可能なことを2時間発信し続けても理想論の押しつけでしかなく、心が離れてしまいます。わかりやすさと距離感を見極め、「自分にもできそう」と感じてもらえるよう心がけました。2時間後には自然と理念への共感度が高まっていて、理念を体現するにはどうすればいいか自発的に考え行動できるようになっている——そんな総会をめざしました。
映像に登場した従業員に生でインタビューを実施
全員にアンケートを取ったのですが、まず印象的だったのは社長のトップメッセージに対する感想でした。当社にもコロナ危機が降りかかり、休業を余儀なくされるなど、社員の不安は従業員サーベイにも如実に現れていました。そのため社長自ら、会社は十分に乗り越えられる財務状況であることを、データを用いて丁寧に説明をしたのです。それに対して「安心した」「私たちを家族のように想う気持ちがあふれていた」といった声を数多くいただき、従業員が不安に陥りがちな状況下で、安心感を提供できたことはとても良かったと思います。
また、最大の目的だった理念体現への理解については、「理解が改めて深まった」というポジティブな意見が大半でした。特にエピソードムービーへの評価が高く、「店舗や地域は違えど、同じ理念を掲げて働いている仲間がいることを実感した」「自分も常に意志を持って、理念体現に向けて行動したいと思った」などの共感の声が多く寄せられたところは狙い通りだったと思います。
費用対効果は高いと思います。当社は、青森から京都まで30店舗以上を展開していますので、従業員を1ヶ所に集めるとなると莫大なコストがかかります。また、その間はお店を休む必要があるため、「売上のチャンスを逃してしまう」「お客様にご迷惑をおかけしてしまう」といった時間的・精神的なデメリットもあります。もちろん社員を一堂に会してのリアルな社員総会ならではのメリットもありますが、店舗サービスを展開する企業であれば、オンラインという手法は非常に有効だと実感しました。
全国に展開する店舗の従業員が参加
晃商の理念は、一人ひとりの日々の行動の積み重ねにより実現できるもの。なので、総会後にみんなの行動が激変する、ということではないと思っています。総会とは、従業員のエンゲージメントをより高めるために「みんな、この方向に行くぞ!」という号令をかけるようなもの。理念体現への新しい種を植えて、あとから振り返った時に「あの総会が転機になったよね」と思えるインパクトは十分に残せたと思います。当社の重要な歴史の1ページとして、今後も語り継がれる1日になっていることを願います。
従業員のみなさんは縁あって当社と出会い、毎日一緒に頑張っている仲間ですから、その全員に「この会社を選んで良かった」と思ってもらえる会社にしたい。だからこそ、理念で皆が一つになって「もっと良くしてやる!」という情熱の火を焚きつけていくことで、晃商はもっと面白くなります。ぜひ、これを読むみなさんにも、今後の晃商に期待してもらいたいと思います。
生き生きと働く社員の姿を伝えるエピソードムービー
本事例のサマリ