支援事例

リコージャパン株式会社

RICOH JAPAN AWARD 2017

表彰を活用し、常勝組織への風土改革にチャレンジ

リコージャパン株式会社

リコージャパン様で毎年開催されている成績優秀者の表彰となる「リコージャパンアワード」。同社は、新たな表彰スタイルの導入で、受賞者だけのアワードから全社員のためのアワードへ、さらに社員の意識や行動を変えることで組織成果に繋げる表彰へと、大きな変革を遂げようとしています。表彰施策を存分に生かし、組織力強化や常勝組織への風土改革に挑む、リコージャパン様の事例をご紹介します。)

人財本部 人財開発室 ナレッジ推進グループ

佐藤 洋一 様

人財本部 人財開発室 ナレッジ推進グループ

小幡 由紀子 様

人財本部 人財開発室 ナレッジ推進グループ

小島 麻奈美 様

全社員が目指したくなる「表彰式」の実現に向けて

Q. RJAを実施している背景をお聞かせください。

リコージャパンは、デジタル複合機やプリンターをはじめとしたオフィス向け画像機器や光学機器の製造を行なう株式会社リコーの販売会社です。2010年に拠点別に独立していた販売機能を統合し、2014年には別会社だった保守メンテナンス・ITシステム部門を統合。着実な成長を続け、現在、社員数約18,500名からなる企業となりました。
統合前は各拠点で業績を称える表彰式を実施していたのですが、それらを統一させようと2012年にスタートしたのがRJAです。そのため、RJAでは全国クラスで顕著な業績を残した社員や素晴らしい活動を行ったチームを表彰し、社員のモチベーションアップを図ってきました。

Q. これまでのRJAの課題とは?

もちろん、運営側は受賞者のモチベーションアップだけではなく、「全社員が目指す対象」として受賞に向けてチャレンジする組織風土を醸成していければと、これまで開催してきました。ですが、時期や場所、受賞人数等の関係から、表彰対象となる社員のみしか集められず、RJA2016での参加者は全社員のわずか3%となる465人にしか満たなかったのです。その結果、RJAに参加しない社員=非受賞者となる9割以上の社員には、その魅力が十分に認知されず「一部の人のための表彰式」「縁のない遠い存在」となってしまい、目指すものにはなっていない状態。そのギャップが一番の課題でした。

成績優秀者を称えるだけでは、 会社の成長は見込めない

Q. 課題解決に向けて、どのような取り組みを行ったのでしょうか。

ギャップを解消するためにも「RJAをもっと認知させたい」ということを考えてはいましたが、明確な解がないまま月日が過ぎ、リンクイベントプロデュース(以下、LEI)のセミナー参加を機に 2016年12月頃からLEIとの交流が始まりました。その中で彼らは表彰制度についての想いをこう話してくれたのです。「表彰制度は単純に成績優秀者を表彰するのではなく、受賞者となるハイパフォーマーのストーリー(=スタンスやマインド)を伝承させ、組織全体のレベルをあげることができる仕組みだ」と。この考え方は、まさにこれまでの私たちにはない発想で、RJAの課題解決に一筋の光が見えたと感じました。そして「まずは受賞者のストーリーを非受賞者に伝える『ストーリーの伝承』をやりましょう」と提案をもらったのです。そこから、LEIとの表彰プロジェクトがスタートしました。
まず、表彰式以外で2つの取り組みを行いました。RJA2016の受賞者を「全社にストーリーを伝えていく人材」として育成する「伝承者ワークショップ」を実施。その後、受賞者のストーリーを全社に伝承するための「STORY映像」を作成しました。そこには、受賞者が直面した苦労や葛藤、それを乗り越えた先にある喜び、彼らの心に秘めた想い。それらが見事に映像に落とし込まれていました。そのムービーがまさに感動を呼ぶ映像として、社内でこれまでにない反響を呼んだのです。

社長コメントが、ストーリー伝承を主軸にした RJAの取り組みを加速させたターニングポイント

Q. RJA2017の制作パートナーをLEIに決めた背景を教えてください。

社長から「より多くの社員をRJAに参加させたい」という要望があり、前回の465名から1,300名まで受賞者を増やすという方針が決定しました。もちろん、受賞者数が増えれば注目度は上がりますが、依然、全社員の9割近くが非受賞者となることに変わりはありません。さらに、会場に来てもらう1,300人には、単に「登壇してもらって、賞状を渡して終わりでいいのか」という問題もありました。延々と1,300人の表彰が続くのも飽きてしまいます。芸能人を呼ぶという話も挙がりましたが、それが正解ではないと思っていました。
そこで、「1,300人に受賞者を増やす」というタイミングを機に、RJA2017表彰式のコンペを行うことにしました。
もちろんLEIにも参加してもらいました。彼らが提案してくれたのが「ストーリーの伝承」を軸においたRJAとその前後施策でした。彼らは「コンサルティング」と「メディアプロデュース」の両方の視点を持った提案で、会社が目指すべき方向を見定めた上で、その実現に向けて RJAをどう位置づけていくか、その前後施策には何を実施すべきか、一つひとつの施策をどのように進めていったら良いかを描いてくれたのです。それが他社と大きく違ったところでした。そして、表彰式という「点」を考えるのではなく、目的実現に向け、一貫性ある前後施策を含めた「線」で考える表彰施策の可能性が受け入れられ、LEIにお願いすることが決定しました。
しかし、それはこれまでのRJAのスタイルを大きく変える内容でもありました。当社はこれまで、RJAに参加する社員全員を登壇させることにこだわってきました。社員の間でも「RJAの参加」=「ステージに上がること」という考えが当たり前としてあったと思います。ですが、参加者が1,300人に増えたことで、登壇者を約450人に絞り、イベントのメインコンテンツを「全員登壇」ではなく「18名の受賞者によるスピーチ(ストーリーの伝承)」へと変えたのです。

Q. これまでの表彰と大きくスタイルを変えることに、不安の声はありませんでしたか?

ストーリーの大切さと訴求する社長メッセージ映像は、社員への良いサプライズにもなった

RJAに参加しても、登壇しない社員が大勢いる。これは役員陣にとって、大きな不安要素になりました。「壇上に上がることもなく、長いストーリーを聞くのは、飽きてしまうのではないか」という声もありました。しかし、それを払拭してくれたのが社長でした。受賞者向けのワークショップの冒頭で社長からのメッセージ映像を流そうということになり、そこで「ストーリーの伝承が非常に大切だ」という内容を社長の口から語ってもらう撮影を行いました。それ以来、社長は経営会議などの場でも、ストーリー伝承の重要性を語ってくれるようになり、役員陣の不安払拭の大きな後押しとなったのです。あの撮影が、ある意味ターニングポイントだったと思います。

当日だけでなく、前後施策にも徹底的な設計を

Q. 新しいスタイルのRJA実施に向けて、具体的にどんな取り組みを行ったのですか?

アワードマネジメントワークショップでのセッション風景

役員陣の懸念でもあった、RJAの全参加者に向けて、「受賞者のストーリー」がしっかり伝わるのか。それが一番大きな課題でした。その課題をクリアするため、事前に2つの施策を行いました。1つ目が受賞者向けの「伝承者ワークショップ」。これは、伝承者としての期待を伝えた上で、伝承の観点を学び、ストーリーの棚卸しをして、「伝承者」の観点でスピーチを考えてもらうというものです。
さらに、2つ目に行ったのが「アワードマネジメントワークショップ」。これは各部署やチームで受賞者を育てる環境や気概を持つことを目標に、受賞者を輩出した組織の管理職を集め、ストーリーの裏にある上司の想いや組織の支援などをつまびらかにした表彰状を作成してもらうというものです。作成の過程を通してマネジメントの観点を学んでもらったことで、表彰状の内容もストーリーやメッセージが詰まったより一層厚いものとなりました。
そして、登壇者だけでなく非登壇者にも満足してもらうため、当日の場作りにもこだわりました。会場入口にはレッドカーペットを敷き詰め、インタビューステージさながらのフォトスポットを設けるなど、アカデミー賞のような期待感を演出しました。さらに、エンターテインメント集団を招き、受賞者を力強くこぶしていただく、応援エンディングをコンテンツとして用意しました。
また、RJAに参加できない非受賞者に向けては、社内SNSにてRJAの様子をリアルタイムで配信したり、RJAのダイジェスト映像を即日社内のサイネージにアップしたり、事後各組織にてストーリー表彰状の授与とスピーチを実施してもらったりと、昨年よりも非受賞者にストーリーが伝わる環境を創り上げました。

伝承者ワークショップでのスピーチ練習

Q. RJA2017の反響はいかがでしたか

正直、大成功と言える結果を残せたと思います。「ストーリーの伝承」へと大きくスタイルを変えた初年度でしたから、アンケート調査による満足度は当然下がると思っていました。ですが、結果は5段階中の4.5。これは前回のRJAよりも良い数値。また、登壇者だけでなく非登壇者も、ほぼ同じ数値結果が出たのです。これは全く想定していなかったので、驚きました。社長や役員陣からも、開口一番「ストーリーのスピーチが良かった」という声をいただきました。もちろん、受賞者(最終的にRJA参加者は1,244名)を増やしたことによる不満は少なからずあったとは思うのですが、それを上回るものを表彰式という場で得られたのではないかと思っています。何より優秀受賞者のスピーチや上司からの表彰状といった「ストーリーの伝承」が参加者にしっかり伝わった結果だと思います。

組織全体の成長に向けて、表彰基準を変えていく

今後のRJAは、どう進化していくのでしょうか。

リコージャパンが目指しているのは「顧客価値企業」。現在、弊社はリコー製品の提供だけにとどまらず、他社製品や先進技術も取り入れながら、お客様の抱える課題解決に取り組み、お客様の経営課題の解決や企業価値の向上ができるパートナーを目指しています。ただ、RJAでその「顧客価値企業」にふさわしい社員を表彰できているかというと、今まで業績中心の選考になっていたので、フィットしていないのです。よって「表彰基準」そのものを変えていく必要があると考えています。
「表彰基準」を変えて、もっとプロセスや人物を評価していくことで、「ストーリー」も濃いものになってくると思います。受賞者は決してスーパーマンではなく、多くの社員と同じ困難や葛藤を乗り越えてきています。ストーリーの伝達には「自分も頑張れば狙うことができる」という受賞者との距離を縮める役割があります。「ストーリー」から非受賞者はより良い気づきを得て、自分の仕事のやり方を見つめ直すきっかけとなるはず。そうした社員が増えていくことで、組織全体の成長に繋げていきたいのです。
これまでRJAを振り返る際には運営上の課題で留まっていましたが、今回は「表彰基準」を変えるといった、本質に踏み込んだ発想になれたのも、1つの大きな成果だと思います。

魂を揺さぶらないと、人は変われない

Q. RJAの成功の秘訣はどこにあったと考えますか。

私たち自身が、表彰式という「点」で捉えるのではなく、表彰施策全体を「線」で見渡せたことだと思います。視点を引き上げて一つひとつの施策を考えていった結果、想いがブレることがないので、クオリティがグッと高くなります。クオリティが高いと、人を感動させることができるのですね。ただ研修や表彰式をやっただけでは行動は変わりません。じゃあ行動まで変えるためにはどうしたらいいかというと、魂を揺さぶるしかない。魂を揺さぶるには感動を与えないといけない。そこまで持っていかないと、人はなかなか変われないのです。そういった意味で、LEIはリコージャパンが直面している経営課題や組織課題の本質から表彰を捉えるという高い視点での戦略や施策設計で、感動的なクオリティを実現していただいたと思っています。
余談ですが、私は30年くらいこの会社にいますが、人をこんなにも感動させる仕事は、正直やったことがなかった。この仕事が今の私のモチベーションになっています。これからも、表彰施策やストーリー伝承を通じたリコージャパンの変革に、全力を注いでいきたいと思います。

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