支援事例

株式会社野村総合研究所

創立50周年事業

創立以来のDNAを継承し
更なる発展につなげるため様々な取り組みを実施

株式会社野村総合研究所

コンサルティングサービス、ITソリューションサービスをインフラ・製造業・金融・流通・公共等のさまざまな顧客に提供している野村総合研究所(NRI)。日本初の民間総合シンクタンクとして大阪万博の来場者予測に成功する一方で、日本初の商用コンピュータを導入するなど、まさに日本、そして世界の未来を作り続けてきた同社は2015年度に創立50周年を迎えた。今まで歩んできた歴史を振り返るとともに、創立以来のDNAを継承し、更なる発展につなげるため、準備期間を含め3年間かけて様々な取り組みを実施した。(プロジェクト期間 2013年4月〜2016年3月)

企業理念を実現していくために 良い意味で自社らしさを裏切る機会に

Q. 50周年事業実施の背景、目的についてお聞かせください。
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木村:当社は1965年4月に野村證券の調査部門を母体とした旧野村総合研究所と、1966年1月に同じく電子計算部門が独立した野村コンピューターシステム(当初、野村電子計算センター)の2社が、1988年1月に合併してできた会社です。両社の創立50周年にあたる2015年度に「企業理念の社内外への浸透と体現」「ブランドとレピュテーションのさらなる向上」「役職員の結束力とモチベーションの向上」の3つを目的に創立50周年事業を企画しました。
経営としては、一万人を越える企業になったこともあり、企業風土に対しての問題意識も持っていました。当社はプロジェクトごとに業務を遂行しているため、強い求心力を働かさなくても日々の業務は回っていくという特性があります。業務としてはそれで良いのかもしれませんが、今後NRIがより世の中に価値を発揮し続けていくために、今一度自分たちの理念である「未来創発」を考え、一人ひとりがNRIに対して誇りをもつ、また、社員同士がおもいやりを持って「未来創発」を生み出せる組織風土にすることの必要性を、経営は強く認識していました。そのため、トップからは「創立50周年事業はとにかく『NRIらしくないこと』をしよう」と言われていました。

Q. どのように創立50周年事業の施策を決めていきましたか?
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菊地社内向けの施策は、各本部から招集した次世代を担うリーダークラス20名の「企画サポートメンバー」に企画を進めてもらいました。
経営の意図はあったものの、彼らにはフラットに「未来創発」を掲げる企業としての課題を洗い出すところからはじめました。喧々諤々と議論する中で、メンバーから浮かび上がってきたのが、「組織風土」に対するものでした。「『未来創発』に対して共感はしているものの、現業務との乖離を感じる。」「決められたことを守るのではなく、新たなことを創り上げていく風土にしたい」「そのためにまずはお互いのことを知る必要があるのではないか…」このようなメンバーの実感値をヒントに、組織課題の解決に繋がる施策のアイデアが130ほど出てきました。これらを5つのカテゴリーに分け、カテゴリー毎に施策を決めていきました。

全社員を‘周年同期®’として束ねるために、 企画・実行メンバーに火をつける

Q. 企画していくメンバーは通常業務との兼務ということで、負荷がかかったかと思います。
現場社員をあえて巻き込んだ意味や実現に向けて意識したポイントを教えて下さい。

菊地:今回メンバーを集めることは本当にこだわりました。周年という「会社」のことを誰か一部の人が取り組んでいるという状態は本質的ではないと考えました。特に規模の拡大にともなって、出自、入社タイミング、役割、役職も異なるメンバーが所属しているからこそ、社員全員に「50周年を共に過ごし、共に未来を創っていく仲間」という意識を持ってもらいたいと思っていました。そんな問題意識に、リンクさんが提唱されている「‘周年同期®’」という言葉がぴったり当てはまったのです。このような理由から、現場社員に一定の影響力を与えることができ、会社全体のことも思考できる次世代リーダー層を選出し、50周年事業の企画をしました。
メンバーの上司の皆さんにはNRIにとっての創立50周年事業の重要性をご理解いただき、快く協力して頂きました。

木村:企画サポートメンバーが半年かけて練った施策の決定後、推進役として「実行サポートメンバー」20名に新たに協力して頂きました。現場におけるエースを現業と兼務のミッションとして集めていることもあり、その方々に積極的に参画して頂くのは簡単なことではありませんでした。わたしたち事務局は、施策の実行のために手を動かすのではなく、彼らが主体性を持って動けるようにサポートしました。プロジェクトメンバーを組成したタイミングでの意識づけはもちろん、施策ごとに一定の裁量を与え、事務局の手を離れて自走できる環境づくりに努めました。

菊地:施策の詳細を決めていく過程の中で月1度メンバー全員を集める「全体会」も実施しました。
①50周年事業全体の目的からずれないようにするため
②施策の設計者視点だけではなく、一社員として客観的な視点を保つため、そして
③プロジェクトメンバーとしてのモチベーションを保ち続けるためです。
全体会では動き出した施策が予定どおり社員を巻き込むことができているのかという社員の反応や施策の進捗状況も確認し、随時施策のブラッシュアップを図っていきました。プロジェクトメンバー同士のフィードバックや対話が施策のクオリティを高め、結果的に「未来創発の組織風土創り」の実現に繋がったと感じています。

※周年同期®は㈱リンクイベントプロデュースの商標登録です

「何を伝えるか」ではなく、「どう伝わるか」を基点に周年事業を描く

Q. パワーをかけても貴社のような大企業において社員を巻き込み、
影響を与えていくのは非常に大変だと思いますが、実際いかがでしたか?

木村:当然全社を巻き込むことは難しいことと想定していたので、創立50周年の1年間だけではなくその半年前からさまざまな施策を展開することにしました。また事業期間をHop(50周年ってなんだろう?:周年と会社理解)、Step(「周年同期®」になろう!)、Jump(次の一歩を踏み出そう)とゆるやかに3つの段階に分け、各種施策を埋め込み、先ほどお話したとおりプロジェクトメンバーとも施策での目標を置き、随時ブラッシュアップを加えていきました。しかし、それでも開始当初に行った「未来創発クイズ」などでは参加を社員の自主性に任せたこともあり、特定の人のみ参加する状態でした。当社の社員は本当に真面目で、業務中に少しでも現業と異なることをすることは良くないことであるという考え方が強いようで、それがたとえ会社全体の施策だったとしてもなかなか参加率が上がっていきませんでした。

菊地:今考えると、せっかく会社全体として意味ある施策を行っているので、ある程度の強制感を出しても良かったかなと思います。

Q. その流れは何がきっかけで変わったと思いますか?

木村:「NRI大運動会」ですね。組織同士が競争することで、組織の結束を高めることを目的に実施しました。良かったことは大きく2つあるかと思います。
①2-5程度の本部をまとめたブロックを組成し、さらに各ブロックを5つのチームに分け、それぞれに代表者を決めたこと=横断組織を組成したこと
②横浜スタジアムで本格的な運動会に仕立てたことです。
①については、現場にチカラの入れ方はゆだねながらも、良い意味でブロック、チーム内で目的に対してメンバー同士が強制感を出し、「やるからには徹底的にやる」というNRIらしさがポジティブに働いたと思います。
そして②は、横浜スタジアムがNRI社員で埋め尽くされる様子を見て、これだけ大きな会社になったのだと感銘を受けたと同時に、本気で各競技に取り組む姿を見て、どんなことにも真剣に取り組むNRI社員と共に働けていることに誇りを持てたという感想が多数寄せられました。

菊地:同じTシャツを着て、皆で本気で汗をかく様子に、NRIらしさを感じたり、仲間だと感じたりしたようです。特に、「NRI大運動会」は唯一の家族参加の施策だったこともあり、いつも仕事のシーンでは見ることが出来ない上司や同僚の一面を見ることが出来て、距離が縮まったという声も多数寄せられました。ブロックによっては、各種目の対策まで練るところもあり、皆の本気が嬉しかったですね。結果として、「部署内メンバーの風通しが良くなった。」という言葉をもらいました。
逆に運動会をきっかけに、その後実施する「創立50周年記念フェスタ」への期待値がぐんと上がり、企画側の私たちとしては相当なプレッシャーを感じていました。

木村:創立50周年事業の集大成であるフェスタは、セレモニー的にするのではなく「NRIを考える1日」ということで、映像やダンスを入れたり、社員を登場させたパネルディスカッションをしたり、最後実行サポートメンバーが司会台に立って一体感を醸成したりするコンテンツを加えました。来てくれた社員に何をメッセージとして「伝えるか」ではなく、「届けるか」にフォーカスしました。

菊地:日々コツコツ頑張っているからこそ、その延長線上に未来創発があることをどうしても持ち帰ってもらいたかったのです。ともすると発信者ありきで詰め込みがちなメッセージをシンプルに設計し、あらゆる角度から伝達したことで良い場になったのだと思います。

ポスト50周年。未来へのチャレンジ

Q. 最後に、この50周年事業によってどんな変化がありましたか?

菊地:社員の会社への見方が変わる「きっかけ」になったように思います。組織風土醸成という意味ではまさにこれからだと思いますが、「決められたことをきちんとやり遂げることが組織風土だ」と先入観を持っていた人も「こんなことやっていいんだ!」と思えるようになったかと思います。

木村:そうですね。未来創発に向けた方向付けが出来たように思います。私自身、コンサルティング部門出身で、それ以外にも様々な組織を経験していましたが、組織や社員それぞれが「違う」ことに改めて気づくことができました。様々な文化を尊重しながら、その違いをポジティブに使えるようになると未来創発は実現できるように思います。

菊地:実は今、企画サポートメンバーから出ていた「社員同士のコミュニケーションの場が欲しい」という要望の実現に向けて動き出しています。これだけではなく、企画サポートメンバーと実行サポートメンバーからは事業の終わりにあたって経営に対しての提言も行いました。その提言なども踏まえ、「未来創発」が体現できるような組織風土にしていきたいですね。

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