受賞者だけのアワードから全社員のためのアワードへ
メンバーの“誇り”、“目標” となるアワードを目指して
コンテンツセキュリティのリーディングカンパニーとして、コンピュータおよびインターネット用セキュリティ関連製品・サービスの開発、販売をするトレンドマイクロ株式会社。同社は、昨年、表彰制度を一新。効果的な制度運用に向けて、イベント、旅行、ツール制作など大小さまざまな施策を行った。社員や役員からも多くの反響があったという今回の制度改訂。その裏には、どんな想いや狙いがあったのか。本プロジェクト を推進した総務部 遠矢氏、野村氏にお話をうかがった。
野村:アワードは、給与や休暇、旅行などさまざまある「報奨」のひとつです。その中でもアワードは、唯一“名誉”を手に入れられるもの。だからこそアワードによって、社員のモチベーションを高めたい、そう考えていました。ただ、現状の表彰制度が“名誉”の授与として、本当にその機能を果たせているのだろうかと。社員の声や様子を見聞きする中で、改善の必要性を感じていました。
遠矢:社内だけではなく、働き方、仕事の仕方も変わってきていると感じていました。激変するビジネス環境下において、市場での優位性や競争力を高めていくためには、部署や役割を超えた“クロスファンクション”での動きが重要となる。これまでも多少の制度変更は行っていましたが、社内外の状況や今後の流れを見据え、今がゼロから考え直す時期だとプロジェクトを立ち上げました。
野村:制度改定にあたっては、受賞者だけではなく、それを見たメンバー(非受賞者)が「次は、自分も目指したい」と思えるようなアワードにしたいと考えていました。この考えをベースに、表彰制度改定のポイントを3 つに定めました。
遠矢:改定のひとつは、「チームアワード」の新設です。このアワードは、改定のポイントのひとつである「クロスファンクション、タスクフォースの活動・成果を讃える」を形にしたもの。会社として、部署や役割を超えた取り組みを推進する中で、それを讃えるための基準を設け、賞賛する。制度改定は、まさに会社からのメッセージ。会社の方針(メッセージ)を社員に浸透させるためにも、会社の方針と表彰制度の連動は、抑えるべき観点でした。
野村:チームアワードは、選出方法を従来とは異なる「自薦+全社投票」スタイルにしました。立候補したチームは、 役員陣の前でプレゼンテーション。それをもとに社員による全社投票を実施しました。投票も事前に評価基準を定めた上で行うことで、評価の“見える化” に努め、事後には全グループへフィードバックしました。
遠矢:また、個人アワードの「対象」についても見直しをしました。これまで営業・非営業部門に対象を分け実施していましたが、部門ごとの選出にすることで、選出人数の偏りや表彰メンバーの固定化によるマンネリ感の払拭を図りました。
野村:その他の改定点としては、頻度を年2回から年1回に。これまでの誰が受賞したか心に残らないという状況から、2012年の“顔” として覚えてもらえる状態をつくる。受賞者を最小限に絞り、“NO.1” を決めることでアワードをより価値あるものへ。「価値」の向上を狙いました。
遠矢:いくら制度を刷新しても、社員のモチベーションアップという目的につながらなければ意味がありません。全社ミーティングでの発表もこれまでの形式的な発表を辞め、照明や音楽を活用した演出、ステージや座席位置にもこだわった運営・進行にチャレンジしました。その効果もあってか、社員の晴れやかな表情が多く見られた気がします。
野村:よりイベントの効果を高めるため、各種ツールの制作にも力を入れました。表彰式当日には、今年の“顔” を覚えてもらうために写真入りの号外を配布したり、受賞後には、全受賞者の紹介をまとめた「Award Book」や「ポスター」を作成し、「誰が」「なぜ」受賞したのか“見える化” を図りました。受賞者に対する見える化はもちろん、メンバーへの見える化にもつながったと思います。
遠矢:4月には、受賞者全員で報奨旅行へ。今まで関わりの少なかったメンバーとの交流や弊社代表エバとのディナーパーティなど、お金では買えない“プライスレス” な経験になったようです。エバからは、各国の中でも日本発の「チームアワード」や今回の取り組みに共感の言葉をもらいました。
野村:また、帰国後、父の日にAward Bookを家族にプレゼントし、受賞を報告したというメンバーも。今回、さまざまな取り組みを行う中で、新たな課題も出てきていますが、アワードの受賞が彼らの“誇り” になるとともに、より多くのメンバーが、“目標” とするようなアワードにしていけるよう今後もプロジェクト を推進していきたいと思います。