2020年08月21日
社員に自社の魅力やオンリーワン性を入れていくインナーブランディング活動においては、ただ単に会社から魅力の情報提供を行うだけではなく、現場で対話の場を作り、メンバーの意見や思いを引き出し、納得感を高めることが必要です。そこで必要なのが、今の時代だからこそ求められるファシリテーションです。
これまで、組織のリーダーは、メンバーに的確な指示を与え、成果に向け、率先垂範してリードすることを期待されてきました。環境が安定し、進むべき方向性がはっきりしている場合には、効率的なスタイルといえます。一方で、現代を表すキーワードとして、最近、ビジネスシーンでも耳にすることの多くなってきたVUCA。Volatility(不安定) Uncertainty(不確実) Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧)という、めまぐるしく変わる外部環境に合わせて、組織内部も、指示命令に適したヒエラルキー構造からフラット化に移行、人材の価値観や就労観、ひいては雇用形態までもが多様化するなど、組織の内外が今、大きく変貌しています。こうした中、現場のリーダーは、これまで通りの指示型のコミュニケーションに頼ることに限界を感じているのも事実ではないでしょうか。
こうした環境の中、インナーブランディングを高めるには、経営のメッセージを現場に「下ろす」「伝える」だけではなく、いかに現場の「声」や「知」を集め、それを踏まえて新たな案を協働によって生み出す、「経営」と「現場」の一体型のプロセスが「場」としてデザインされるかが、重要です。 そこで今、注目されているのが、ひとりひとりの意志やアイデアを引き出して、全体としての価値に変換するファシリテーションです。ファシリテーション(Facilitation)の接頭語である(Facil)は、ラテン語でeasyを指し、促進する、容易にすることを意味します。このファシリテーターは、組織に根ざす課題や要因をリーダー1人の力ではなく、メンバーの力を引き出して、容易に事が運ぶように、促す人のことをいいます。
そこで、大事になってくるキーワードは、互いの力を活かしあう、『相互性』です。 ファシリテーター、参加者、どちらか一方が「頑張る」のではなく、お互いの力を活かしあい、落とし所のない、期待を超えた新たな価値を共に創りだしていく、まるで即興ダンスを楽しむような遊び心を持ってフロアに立つことが求められます。そういった意味では、場の成功は、ファシリテーター(ダンサー)と参加者(パートナー)と問い(リズム)の三位一体であり、一緒に踊る、共に場を創る、歓びを見つけることが必要です。そして、頭ではなく、相手のハートに目を向け、好奇心を持つこと。「結論」に誘導することを急がない腹括りも求められるのです。